記憶を失くした少女【完】




______ザワッ…………。



私がこの人たちから話しかけられてから、何だか異様に周りが騒がしい。

直接言っては来ないけど、小さな声でコソコソ話しているのがよく分かる。


「あ、わかった。隣の席のやつ休学してっから、そこの席使っとけって言われたんだろお前(笑)」


金髪が『当たり?』と言った感じの顔で見てくる。

やはり、私が山田綺羅とは思わないのね。


「私は___……」


名前を言おうとしたとき、あの殴ろうとした女が言葉を遮った。


「この女は山田綺羅ですよ。見た目まで変えてRYUSEIの姫になろうなんて、どこまで図々しいんでしょうね(笑)」


鼻で笑うかのような、その女の口調。


「……………は?山田綺羅?」

「山田綺羅ってさ、あの金髪女じゃない?」

「……あぁ。ここまで変えるなんてある意味すげぇな」   

向こうはクラスメイトということもあり、私のことをもちろん知っている。


………………………って、なんでここでRYUSEIの姫の話がでてくるの?


「記憶喪失とか言ってるけど、正直嘘なんてまるわかり(笑)騙されないでくださいね!」


なんで、ここまでしてこの人たちにそんな事を力説するのだろう。


「記憶喪失?」