記憶を失くした少女【完】




拳を振りかざそうとしていた女は、その人たちの登場に動揺しながら、すぐ様拳を後ろに隠した。



「大平様、おはようございます!」


「宇佐さ~ん!!!」


「キャ~!!!天野様、今日も可愛い~!!!」


謎の沈黙の後、何もなかったかのように女たちはざわめきだった。


反応からして、どうやら今来た人たちはこの学校の中で人気らしい。

取りあえず視線が一気に向こうにいってよかった。


幸い、今入ってきた人たちは私には関心がなく、すぐ様席に向かっている様子。


このまま、絡まれないといいな。

そう思ったのもつかの間。

よく考えれば、あいている席は私の周りにしかなく、恐らく……………いや、絶対あの人はそこの席だと気づいた。


「…………あ?お前って、噂の休学生か!?」

金髪が早速私に話しかける。

……………って、さっき目あったんだけど、そのときは何も思わなかったわけね。


「本当に黒髪なんだね。正直、地味。でも、顔は可愛いじゃん」

ピンクの髪の子も続いて喋る。


「階段で見かけた子だね」

茶髪の髪の人は、わりとこの中では落ち着いた雰囲気。