記憶を失くした少女【完】





「A組のやつらはみんな良い子たちだ。すぐに仲良くなると思うよ」


A組担当の人は須野(すの)という40代の男教師。


少しふくよかな体型で顔にはメガネをかけており、朗らかな性格からきっとクラスのマスコット的存在の先生なんだろうな……と勝手ながら思った。


「ここだよ。僕が呼んだら入ってきてね」


「分かりました」


少しざわついていた教室が一気に静まり、そして再びざわつき始める。


『どうぞ』という先生の言葉に合わせて、私はゆっくりと教室に入り、みんなの前に立った。


「今日から編入しました、山田綺羅と言います。よろしくお願いします!」



「わー!女の子だ!」

「かわいー!」

「よろしくー!」

幸いにも私のことを知っている人はおらず、ひとまず安心。

先生の言ったとおりみんな良い人で、休憩中も話しかけてくれた。