記憶を失くした少女【完】




【side凌馬】


___ガチャ。


開店していない準備中のお店に、従業員専用の裏口から血相を変えて入ってきたのは旭川だった。


「どうした?」


いつもなら開店してからくるが、する前に来るのは珍しい。

それにそんなに血相を変えてまで来る理由が気になった。


ろくな話じゃなかったら、取りあえず一発殴る…………。


「これ」

そう言って見せてきたのは、綺羅のカバンに付いていたキーホルダー。


「これがどうしたんだ?」

「これをあの場所で見つけたんだ」


あの場所……………………たくさんありすぎてどこかよく分かんねぇや。

「アレだよ!お前が暴れた繁華街の路地裏!!」


……………あそこか!

「その入り口にコレが落ちていた。しかもその前にだ。怪しくねぇか?それに、情報によればRYUSEIの姫とその学校の生徒1名青雉に捕まってるとか」


RYUSEIの姫と学校の生徒……………?


そして綺羅のキーホルダー…………………嫌な予感しかしねぇ。


「それなら恐らくRYUSEIに何か条件が出されたはずだ。それ探れるか?」

「少しだけ時間かかるがいいか?」

「どのくらい?」

「数分はかかる」


「大丈夫だ。任せる」


まだRYUSEIには手を出さないと思っていたが……………読み間違えたようだ。


しかも、その捕まってるのが綺羅である可能性がある以上、見逃せねぇ………。


「RYUSEIの倉庫近くにドローンを飛ばしたんだが、そこから見ると動きが慌ただしいな。恐らくアジトに行くように言われたのかも」


…………………それならまずは向こうより先にアジトを見つけなくては。


___カタカタカタ……………カタカタカタ…………。


「分かったぞ!ここからそんなに遠くねぇ。やはりあの裏路地から近い位置にアジトはあったようだな」


「そうか。それなら支度して行くぞ」

「おう!」

「念の為、防弾チョッキ着ておくか。銃を隠し持ってるかもしれねぇから」


支度を済ませると久しぶりにバイクにまたがる。

最近ずっと車を使っていたからな。


______ブォンブォン…ッ!!!


軽くふかすと一気に飛ばす。この繁華街の裏は普通の道路になっており、そこからアジトまで向かう。


どうか間に合ってくれ…………………。