記憶を失くした少女【完】



ボフッ…………。

電気も付けずに、ソファーの上に持っていたカバンを置くと、そのまま真っ直ぐ歩いた先にある、ベッドへと腰を下ろした。


晩ご飯の支度ができたら使用人さんが呼びに来るから、その前に済ませておかなきゃ………。


本当はこんな事したらいけないって分かってる。バレたら両親に迷惑だってかけるし、何にしろ遥輝達から軽蔑されるに違いない。


それでも、萌はRYUSEIを守りたい。


その為には、消えてもらうしかないの……。


______プルルルル…………………ガチャ。


電話をかけると直ぐに向こうへ繋がった。


「……………誰だ?」


知らない番号から掛かってきたので、疑ってるわね。


相手が裏の人たちだから、警察かもしくは情報を探るどこかのスパイか疑うのは当たり前。


「貴方たちに依頼したいことがあるのぉ」

「あ"ぁ?俺達が誰か知って言ってるんだよなぁ!?」

そんなドスの効いた言葉発しても萌えにはきかない。

伊達に族の姫してるわけじゃ~ないんだからね!


「報酬は50万円でどう?」

「……………その前にあんたは誰だ?」


「私はぁ~安藤萌って言うのぉ。どうせ分かることだと思うけど、RYUSEIの姫やってる」

「…………RYUSEIの姫だぁ?」

「えぇ」

「そいつが何で俺らの………いや、俺の電話番号知ってんだ?もしや、向こうにもバレてんのか!?」


「萌しか知らないから安心してぇ。これは取り引き。この事も仲間は知らないから、秘密にしてほしいなぁ」


探偵さんに依頼して電話番号を知ったのよね。


「…………………で、どうして欲しいんだ?」

「蒼坂高校の山田綺羅という女を拉致してほしいの。怖い思いさせて懲らしめて、学校から追い出すことが目的だからぁ」


出来ればRYUSEIの目が届かないとこに転校してくれた方が、接点なくなって助かるしぃ~。


あ、そうだ。


「RYUSEIへの信頼を無くすために、偽造工作も必要ね………寝てるとこを無理やり犯して、そこを写真に撮るの。もちろんその場に萌も行くから安心してぇ。報酬はその場で渡す。これで良いでしょ?」


そして、その写真を遥輝に後でみせれば完璧ね。


きっと幻滅してRYUSEIを追い出されるに決まってるんだからぁ。