記憶を失くした少女【完】



__
___
____


「俺はあの日があったから変われた。だけど、実際のところまだ弱虫なままなんだ……」


今の大平くんとは考えられない内容だった。


「名前が…………やっぱり関係するの?」

「………下の名前で呼ばれると、昔のことを思い出しそうで怖いんだ。それに、下の名前好きじゃねーし……」


確か、下の名前は蓬。


確かに珍しい名前だとは思うけど、そこまでおかしくはないと思うんだけどなぁ。


私なんか綺羅だし(笑)

最近で言うキラキラネームってやつね。


…………………あ。


「大平くん」

「ん?」


呼びかけると下の方を向いていた顔が私の方に向いた。


「私もね、綺羅って名前嫌いだった。変なのってよく言われたし、辛かったの覚えてる。でもね、前向きに考えるの。人とは違う名前って、逆に考えたら素敵じゃない?だって、かぶる確率が少ないんだもん!」


『何で…………私の名前は変なの……』


『妹ばかり……………………』

『なんでこんな名前つけたのよ!』

『お母さん…………………』


不思議と何だか、思い出せる。


写真に写っていた、幼い頃の私が脳裏に浮かび再生される。