記憶を失くした少女【完】




「おい、蓬。邪魔する気か?」


向こうは何だか急に不機嫌になった。


きっと今まで黙っていた大平くんがいきなり抵抗したから、ムッとしたのだろう。


「わりぃけど、それは無理。コイツも貸せねぇから、他あたってくんない?」


気づけばいつもの大平くんに戻っていた。


「あ"?俺らに楯突こうとすんのか!?」

「蓬のくせに」

「女の前だからってカッコつけんじゃねーよ!!小・中の頃はイジメら……「そのうるせぇ口を閉じろ」」

「…………………………」

あの時みたいなスゴい殺気………。


脅すには効果的で、さっきまでうるさい口を叩いていた人たちが急に静かになった。


この人はこうゆうとき、急に雰囲気が変わる。


いつもは明るくてバカっぽい大平くんなのに、このときはまるで別人のように見えた。