記憶を失くした少女【完】




萌ちゃんの行動に感動しつつ、受け取ったオレンジジュースを一口飲む。

大平くんはビタミンドリンク、天野くんはいちごオレ。宇佐くんはストレートティー。そして、矢野くんと遥輝はコーヒー。


好みによって性格がよく分かって、何だか面白い。


ちなみに萌ちゃんはピーチティーだった。


「気持ちは落ち着いたか?」

隣にいた遥輝が、ちびちびとオレンジジュースを飲んでいた私に話しかける。


まだ緊張はしてる………………。

でも、これを頑張らないと完璧の仲間にはなれない。


みんなが大切にするこのRYUSEIの仲間とも仲良くなりたい。


だから、


「………そろそろやってみる」


心を決めてみんなの前で挨拶をする。


そう返事をするとみんなと一緒に階段の場所まで一緒にいく。


ここからは下がちょうど見下ろせ、声も届きやすそう。


「お前ら注目!!!!」

______ピリッ……。


遥輝が大きな声を出した瞬間、体が痺れるような感覚に襲われた。


RYUSEIのときというか、みんなの前に立つときの遥輝は私の前とは違って、迫力がある。


下にいる仲間たちはその声で一斉に遥輝のいる上を向いた。


「今から新しい仲間、2人目の姫を紹介する!」


______ザワッ………………。


遥輝がそう言った瞬間、一気に辺りがざわめき立つ。

『2人目の姫…………?』

『もう1人いるのに、さらにもう1人か…………………総長は一体どんな考えなんだ?』


『まさか、総長に女ができたんじゃ………』


『いや、待てって!総長は女苦手だろ?まず考えられねぇって』


賛成か反対か、ここからじゃ分からないけど、ただ私はどうであれみんなの前でちゃんと挨拶をするだけ!


まだ少し緊張してるけど、目をつぶってひと呼吸おいた後、一歩前に出た。


ここからよく下の様子が見える。

そして、下からも私がよく見えている。


_____スゥ…………。


「山田綺羅です!これまでは、遥輝と友達やらせてもらってましたが、これからはRYUSEIとして、関わっていくことになりました!」


声が震える………………………頑張れ私。


「急に仲間なるとか言われても、『は?』って思ってる人が大半だと思います。私の良くない噂も知ってます」


『山田綺羅って………!!』

『あの女……だよな?』

『え?その女が姫?意味がわからねぇ!』


『総長達騙されてるんじゃ……!』


「でも、仲間になる上で隠し事はしたくないので言わせてください。私は事故にあい、記憶をなくしました。こんな話聞いても作り話って思うかもしれない。思っててくれてもいいので、その分これから私のことを知ってほしいです!」

『記憶……?』

『そんな話あるのか?』

「これから宜しくお願いします……!!」


何とかみんなの前で何とか言うことができた……!