記憶を失くした少女【完】




降りてみて改めて思うことは、住宅地や商店街から離れているせいか周りには何もなく、ただデカくて古い倉庫だけがポツンとあるだけ。


見た目的に、工場の跡地っぽい。


_____ガラガラガラ………。


少しサビっぽい、突っかかったような鈍い扉の音。


中は広くて、物といえば鉄パイプ椅子や長机ぐらいしか置いてないけど、そこが狭く見せるほど仲間と思われる人たちがたくさん集まっていた。


「「「「「お疲れ様です!!!!」」」」」


一斉に浴びる視線と、大きな挨拶。そして、驚くほどお辞儀が揃っていた。


「俺らは上に行く。また後で呼ぶからそれまで自由にしてろ」


遥輝は頭を下げる皆の前でそう言うと、私たちを連れて端の方にある鉄の階段へ向かった。


みんな頭下げてたから私のこと見えてなくて、何も言われなかったけど、この後あの人数の前で挨拶すると思うと凄く緊張する……………。


上は普通の部屋みたいになっていて、3つの扉があった。

幹部しか使えない談話室があり、その部屋の右側には総長専用の部屋。そして、談話室の左側が仮眠室になっているのだそう。


私たちが最初に入ったのは階段から上がって真正面にある談話室。


そこにはテーブルを挟んで置かれた青のロングソファーに60インチの大きなテレビが設置され、その他にも食器や流し台などもあり、生活上困らないものばかりがあった。


「……………スゴい」

「ここは前、工場の倉庫だったんだ。上は従業員の休憩室になっていたから、ある程度は揃ってるし、裏で契約したから水道も出る。その経費はまぁ…………………秘密だ(笑)」


矢野くん……………………それ逆に秘密にされたら怖いから!!


裏で契約ってなに!?普通の契約とは違うの!? 


「みんなはいつものでしょ~?綺羅ちゃんは飲み物何がいい?オレンジジュースとか、ウーロン茶とか。ある程度はあるんだけどぉ」

「あ、萌ちゃん私も手伝うよ!」

「大丈夫!萌、こうゆうの得意だからぁ~」

そう言うと、テキパキと飲み物の準備を始める。


やっぱり長くみんなと一緒にいるからか、好みをよく分かってる。


「はい。綺羅ちゃんはオレンジジュースねぇ~!」

「ありがとう……!」

やっぱり萌ちゃんはスゴイなぁ。

カラオケ店の受付のときもそうだったけど、自ら率先して動いてる。

私も見習わないとね。