記憶を失くした少女【完】




教室を出た私は、そのまま遥輝に連れられ隣の棟へと移動した。


この棟は屋上や保健室、職員室などがある棟だけど…………、


「一体どこに行くの?」


1歩前を歩く遥輝に問いかける。


「屋上」

「え、屋上!?」


「仲間に学校来たら、そのまま屋上来るように連絡した。そこで、お前のことを紹介しようと思う」

顔は見えないけど………一体何を考えているのだろう……。


確かに後に仲良くなれたらいいなぁ~とは思ったよ?

でも、こんなに早いとは思わないって!


「なに、緊張してんの?」

「いや、緊張っていうか…………この間忠告受けたばかりだし、ちょっと会い辛いっていうか………」


特にあの金髪くん………じゃなくて、大平くんだっけ?


さっきの遥輝もそうだけど、何だか怖かった。


「まぁ、アイツは何ていうか萌のことになると熱くなるとこがあるからな。でも、悪いやつじゃねーよ。正直者で単純で面白いやつだ」

遥輝の方が大平くんのこと知ってるから、そうなんだろうけどさぁ………。


「さっきの怖かった……」

「さっきの?」

「うん。なんか、殺気かな?私までもゾッとしたんだけど」

「仕方ねぇよ。殺気をお前だけ分からないようにするなんてテクニックできねぇって」

それはそうなんだろうけど…………。


「別にお前に向けてしたわけじゃねぇから安心しろ」

「…………うん」


まだ慣れないんだよね。

ずっとあんな感じのこと周りからされてたから、私に向けられない殺気ってのが。