顔なんて見なくても、すぐにわかってしまうから、恋ってすごい。


「雪で近所の電線が切れたって。
だからこの辺全部停電してるんだって。
アスカ、暗いの苦手だろ?
おばさんに結構前から合鍵預かってて、だから勝手に入ってきたんだけど。
よかった、正解だった」


早口に、でも丁寧に説明してくれたリュウが、ギュッと腕の力を強めた。


その優しさがすぐそこにある事にホッとして、思わずその胸に顔を埋める。


「なんで、ここにいるの」


「は?だからおばさんから合鍵預かってて」


「違う、そうじゃなくて。花村さんは?」


そう言うと、リュウはピクリと反応した。


「それ、なんでアスカが知ってんの?」


質問に質問で返されて、ムッとして顔を上げる。


「女子の情報網は恐ろしいんだからね。
それに花村さん、体育の時に言ってたもん。
絶対リュウとクリスマスデートするんだって」


あの日、気まずくなってしまった日。


クラスメイトの花村さんがリュウをデートに誘うって言っているのを聞いて、柄にもなく焦ってしまった。


だって花村さん、可愛いから。


私と違って素直で、ふわふわしてて、守りたくなるような『女の子』だから。