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「アスカ、今年もクリボッチかよ」


ニヤリ、とイヤミな顔で笑った隣の男は、幼なじみ兼隣の家に住む隣人のリュウ。


「うっさい、ほっとけバカ」


その歪んだ表情でさえ整って見えるのだから、イケメンは罪だ。


「だいたい、クリボッチのなにが悪いの?
ただ12月25日に予定がなくて一人でいるだけじゃん」


口を突いて出るのは、可愛くない言葉。


本当は、聖なる日なんだから好きな人と一緒にいたい、とかキャラじゃないことを考えちゃってるくせに。


「そんな事言ってるから彼氏できねーんだよ」


何気ないリュウの言葉が、突き刺さる。


うっさい、バカ。


別に『彼氏』が欲しいんじゃない。


ただ、私の好きな人に、私の事を好きになってもらいたいだけ。


これを友達に言ったら『アスカのくせに乙女』だって笑われたけど。


「別に、ほっといてよ。
あんたは花村さんとデートでも行ってれば?」


言ってしまってから、すぐに後悔した。


違う、こんなことを言いたかったんじゃない。


クリスマス、一緒に過ごそうって。


どこにも行かなくていいから、一緒にいたいって、たったそれだけを伝えたかったのに。


「は?なんで知って………。
そんな事言うんだ。
じゃ、もういいよ」


不機嫌そうな顔で、リュウは隣の家へと入っていった。


それ以来なんとなく気まずくて、うまく顔を見れないまま、ずるずる、ずるずる引きずって。


結局、クリスマスを迎えてしまった。



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