「あれ、悠太くんは?」
『舞羽ちゃん!トイレだよ~、ごめんね、送り出しちゃった。』
前の机の友達と話し終え、自分の席へと荷物を取りに来た彼女がふと僕を視界に捉えた。
「いや全然いいんだよ!?…声も掛けようか迷ってた所で…」
『へ?…何を?』
「あ、その…移動教室、…一緒に行っていいかなって…。」
『……え?』
不意に漏れた言葉を抑える様に、手の甲で口を抑えた。
だって、舞羽ちゃんがこんな事、
「いつも一緒でしょう?2人。だから、……えっと…途中参加の私が入り込んでもいいものかな、と……考えてまして…」
僕と同じ様な事、考えているだなんて思ってもいなかったから。
そうだ、彼女は、
とても、気の利く子。
とても、謙虚な子。
とても、優しい子。
『良いんだよ、だって舞羽ちゃんは悠太の彼女だろー?』
「……いいのかな、…ほら、悠太くんもさ、」
悠太を思いやってくれる、悠太の大切な子。
『大丈夫だって。ほら、悠太って舞羽ちゃんにゾッコンだし。』
僕の言葉を聞いてぼわっと顔を赤らめる彼女。
良いんだよ、君が遠慮しなくても。
遠慮する必要なんて、何処にもないんだ。
だって君は、あの高嶺の花の“髙野悠太”に選ばれた、たった1人の女の子だから。
……でも、
『…その代わり、そこに僕もお邪魔しちゃうかもしれないんだけど…』
「いいんだよ!?全然!…佐藤くん、悠太くんと仲良しだもんね!」
_僕は、
どんなにイラつかせても、不機嫌にさせても、…勘違いを繰り返しても、
『まあ、僕、親友だからねぇ。』
_親友だ。
“友達”と“恋人”
距離感は、人それぞれ。