訳ありですが何か?~桑の実~

驚きで彼の手が緩み、渉が苦しい状態から逃れたことを確認した。


それなら私はこれ以上害を加える必要は無い。

パッと手を離し、渉の頬へ手を伸ばそうとしたが、その手は空中でさ迷うこととなった。

視界の端で、熊谷 風花が此方を鋭い目付きで睨んでいるのが見えたからだ。


すると渉は不服そうに眉を寄せた後、私の首元に擦り寄ってきた。

四月一日 一輝は納得のいかない様だった。


「キミたちはいったい…」

「何か勘違いしているみたいですけれど」

彼の言葉を遮る。


するとそんな私の口を渉が優しく塞いだ。

渉に手で覆われた時は、下手に動かない方が良い。

これは長年付き添ってきて学んだことだ。


「瑠奈に何かあったら俺が動くし、俺に何かあったら瑠奈が動く。
これは嘘じゃないから。

…悪いけど俺たちの邪魔、しないでくれない?」

しん、と静まり返る室内。

皆が唖然としている中、渉は立ち上がる。