「もう大丈夫だよ」


熱気の篭った部屋に一筋の光が差し込んだことで、握りあっていた右手が微かに動く。

汗ばんだ掌が、より一層熱を持った気がした。

頭が上手く働いてくれない中、次第にガヤガヤと騒がしくなる室内。

浅い呼吸を繰り返していると、私は女の人に体を引かれたがその場から動かない、いや、動けなかった。


静かに、冷たい瞳と熱を持った瞳がぶつかり合う。

女の人は戸惑った様子で声を上げたが、強く強く絡めあった指は離れることがなかった。