観覧車は意外と空いていて、わたしたちはさほど並ばずにすぐに乗ることができた。


お互い向き合って乗り込んでしまい、やっぱり隣にいたいなあなんて思ったんだけど・・・


「あのさ・・・」
エイジ君がちょっと真剣に何か話し出すので、どうしたんだろうって思う。


「しばらくは止めよう、先週みたいなことはさ・・・」

一瞬何のことだかわからなくて「なにが?」って聞き返してしまう。

「もうセックスはしないからな。」

はっきりそう言われて、思わず何でって聞き返してしまう。


「大人になるまでは止めよう、ちゃんと大事にしたいからさ。」



なんだか寂しい気持ちと嬉しい気持ちとで、ものすごく複雑な気持ちになってしまう。
だって、あれからもうずっと、そのことばかり考えちゃって、凄く期待してしまっていたから・・・

「じゃあキスは大丈夫?」

それはいいよねって思ったけど、思いっきり「それもダメ」って言われてがっかりする。


「なんで?キスなんて、普通に挨拶みたいなものじゃない。」

そういうと、エイジ君はとても難しそうな顔をして悩んでいた。



「ビトとはそうだったんだろ? でも俺は違うもん。キスしたらぜってーやりたくなるからダメ。」


「そんなの、我慢すればいいじゃん。」

私はムキになって言ってしまったら、そんな簡単に我慢できないって言われて、なんか男の子ってめんどくさいなーって思った。



「じゃあ大人っていくつから言うの?二十歳から?」

そんなに待てるかなあなんてぼんやり思ったら、

「そんなにはきっと待てねえなあ・・・」ってエイジ君も同じようなことを言った。



「桃は誕生日九月だよな?」

そうだよって答えると、じゃあ取り合えずそれまではがんばるとか言われて、後一ヶ月ちょっとじゃないって、おかしくなって笑った。



「ビトは十八まではやらないっていってたのにな・・・ 俺はきっと無理。」




「ちょっと待って、何でそんなこと知ってるの?」





びっくりして聞き返すと、ビトから直接聞いたという。


二人でたまに遊んでるっていうのは、ビトからも聞いていたけれども、なんだかとっても複雑だ。

「どうせ私の悪口ばっか言ってるんでしょう?」

ちょっとふてくされてそんなことを言ってしまう。あの時ビトに聞いても、内緒だって教えてくれなかったんだもの。


「悪いことなんてないんだからそんな事話すわけねーだろ。」

さらっとそういう風に言ってくれるのが、なんだかちょっと悔しかった。



「俺だってさ、気にしてるんだぜ。お前ビトが嫌いになって別れたんじゃねーだろ?」



ああそうだ、そういえばエイジ君だって、好きな人が居るんじゃない・・・
先週の彼女を思い出して、なんだか泣きたくなってくる。


「エイジ君もそうでしょう? 私の他にもいるでしょう?」



エイジ君は私の手を取りながら、泣くなよって笑って頭を撫でてくれる。


「俺たち、そういうとこきっと同じなんだよな・・・
ただ、おれはさ、今は桃が好きだしずっと一緒に居たいし。あれからあいつには会ってないし・・・」


ちょっとためらいながらも、エイジ君は話し続ける


「でもさ、俺はいいよ。お前がビトが好きなら、また戻ってもいいよ。」


何言ってるの、そんなことあるはずないのに。どっちがいいとかそういうのじゃないのに・・・


「そんなこといわないでよ、私は戻らないから、私だってずっとそばに居たいのに・・・」