下校時間になると、校門のところでエイジ君は早々と待っていてくれた。

そういえばこの前も、時間より早く来てくれていたっけ。


私は嬉しくて、彼のことしか見えていなかった、思わず駆け寄って手を振る。


「エイジ君、遅くなってごめんね。」

彼も照れくさそうに手を上げてくれるけれど・・・





あ、そういえば忘れていた、いつもは私のファンの男の人たちが、待っていてくれていたってことを。




「もっ桃ちゃん、ここ…こいつ誰ですか?」

そういったのは、前の中学の先輩だった男性で、いつも私を迎えにくれていた人の一人。
ビトのことで色々あったころ、みんなで私をかばってくれていたんだ。

「お友達だよ、これからはエイジ君が迎えにきてくれるから、大丈夫だからね。」


私はいつものように、満面の笑顔でみんなに微笑むと、じゃあねって言いながら手を振って別れた。

そして、エイジ君の制服のすそを引っ張りながら急いでそこを離れると、最寄の目黒駅まで足早に向かう。


エイジ君は面食らったようにびっくりしていた。


「あいつらお前のファンなの?」

笑いながらそうきくから、そうだよって答える。


「中学の時の先輩とか、近所のひととかだよ。私が下校のときに、変な人に絡まれないように、いつもみんなで送ってくれてたの。」


みんなアイドルオタクみたいな人だけど、優しくてけなげでいい人ばかりだった。


「うちの学生はさ、電車とか乗ると痴漢に遭いやすいし、なるべく親とかに送ってもらうよう、先生にも言われてるんだ。」

朝はお母さんの店の車や、お父さんの仕事に行くときのマネージャーさんの車の運転で通っているけど、帰りは一人だったから。



「でも、俺だって毎日迎えには来れないぜ?大丈夫かよ?」

エイジ君は心配そうにそういう。

「あっ、ごめんなさい…さっきはあの人達の建前でついそう言っちゃった。」


なんだかいつもの調子の作り笑いで、わざと明るく私は話す。



「最近ウザいなぁって思ってたんだよね。よかれと思ってしてくれてるから、断れなくて困ってたの。
下校の時は痴漢とか居ないし、友達と帰るから大丈夫だよ。」