「なんで、昨日あんなに…」

ビトは最後の言葉を濁しながら、涙声になっているのがわかった。
私はずっと頭をあげられず、必死で涙をこらえようとしたけれど、それは止まることを知らず流れ続けている。



「ごめん、ごめんなさい。許さないでいいから、もう私の事なんか嫌いになっていいから、ごめん。」


「わかってたよ、あいつでしょ?初めて会った時から好きだったんでしょう?」

ビトはそう言って私を責めた。

「知らないと思ってたの?隠れてメールしてたでしょう。今日だって今まで二人で、何してたんだよ!」

私はずっとうつむいたままで顔をあげることが出来なかった…


「知ってたからわざとかまかけたんだ、一緒にくればって。
でも桃ちゃんは、それでも戻ってきてくれると思ってた。」


ビトがどんな顔で言っているのか、どんな思いでいっているのか、わからなかったけれども

「ごめん…」
私はそれしか言えなかった。








「ねえ、これで満足?」


最後に急に優しくビトはそう言って、私を抱き締めてくれた。



「なんで?」


「嫌いになんてなれないよ…ずっと好きだから、ごめん。僕の方こそごめんね。
どっちにしたって、もう付き合えないんだ、ゴメン…」


ビトの綺麗な顔が、涙でぐちゃぐちゃになりながら最後に優しくキスをしてくれた。





「ねえ、幸せになって、僕も頑張るから、トップを目指すから…」



最後にお互いしっかりと涙を拭くと「サヨナラ」と呟きながら、ビトは帰っていった。