足取りも重く家路につくと、反対側からビトの声が聞こえた気がして顔をあげた。


「桃ちゃんどうしたの！」


顔をあげてまっすぐ前を向くと、そこにはさっきまでランウェイで颯爽と歩いていたモデルの彼とは違う、いつものビトがそこに立っていた。

隣に蓮も呆然として立っている。



何を驚いているんだろうと思って髪を触ると、ああこのせいかと思い出して、又嫌な記憶が甦った。



「どうしたんだよその頭。」

蓮が真っ先にそう聞いてくる。

「ちょっとね、イメチェン。暑かったしね…」

そんな風に笑って言ったのに、二人とも神妙な表情は変わらなかった。




「僕のせい？」


ビトはそんな風にいうけれども、そうだとも言えなくて戸惑う。

「違うよ、前から切ろうと思ってただけだよ。」

笑ってごまかそうとしたけれど、ごまかしきれてなかったみたい。






「蓮、ちょっと桃ちゃんと話があるから、先帰って。」

もう家の玄関の目の前だったけど、わかったといって蓮は先に入っていった。





「ごめん、ビト…　私ね、好きな人ができたの…」


ビトはきっと、別れ話を言い出す。そう思ったから、私からそんな風に切り出した。



「だから何？」

悲しそうな目で彼はそう聞き返す。


「だから、別れてください。」



私はそのまま深く頭を下げた。

涙がいつのまにか、歩道に落ちていくのがわかった…