美容院はカットモデルってことでただにしてもらえたし、ラーメンもエイジ君がおごってくれたりして、なんだか悪いなって思いながら、ありがとうって伝えて原宿駅で別れようとしたら、うちの近所まで送ってくれると言う。


この人は、なんでここまで優しいんだろうと思う。

他の人がどうだかはよく知らないけれど…


微妙に混んだ山手線の中、私たちは、ドアの前にもたれて何となく外を眺めている。

エイジ君の携帯が鳴ったと思ったら、チラッと見ただけですぐしまってしまうので、又女の人かなって思っていたら、私の携帯にもメールが届いた。

ビトからだって気づくと、さっきまでの嫌な記憶が又よみがえってきて切なくなる。

「ビトからメールじゃないのかよ。」

そんな風に聞いてくるけれども



「もういいんだ、なんだか疲れちゃった…」


ずっと外を眺めながら、私はぼんやりとそんな風に返した。



目黒駅で乗り換えて、最寄り駅までつくと、私はもうここまででいいよって言いながら、改札の中で別れようとした。


じゃあねって小さく手を振って背を向ける…



「なあ!」

改札を出た私に彼はそう大きな声で叫んだ。



「お前、辛いならビトと別れろよ!」




なんで、なんでそんなことを言ってくれるの?

あなたは私の事なんか好きでもなんでもないくせに…


「今日は本当にありがとう、おやすみ…」

私はもう一度小さく手を振って背を向けた。