ショーの会場の前に着くと、顔見知りのビトのオリキの女の子たちが何人か居た。


とくに仲良しのミキちゃんと少し話をして、彼女たちは今日は入れないと知ると、すぐに帰っていく。

帰り間際に、「ヤラカシがきてたから気をつけて」なんていわれた。



「みんな、あんなファンの子ばっかだったら、ビトもお前も楽なのにな・・・」

受付を済ますと、エイジ君はそんな風に言ってくれた。

そうだな、ここまでくるのに色々と大変だったなといまさら思う。


「そうだね・・・みんなちゃんとああやって理解してくれればいいんだけどね・・・」

私はまた、深い溜息をついていた。




ランウェイの隅の方、ギリギリ見えるか見えないかっていう目立たない場所が私たちの席だった。
メインの席には、いかにもって感じのファッション業界の人や取材やカメラマンの人がひしめき合っている。

わたしたちみたいな子供がこんなところに居ていいんだろうかとちょっと思ったけど、エイジ君が堂々としていたので安心する。


ショーが始まると、きらびやかなライトの下、派手なロック調の音楽が流れ、たくさんの外人モデルの人が目の前を通り過ぎる。
中盤ぐらいになってビトもやっと現れて、見たこともないキリッとした表情で颯爽と歩いていく。



ああかっこいいなあ・・・ 素敵だなあ・・・

この人が、昨日一緒にいたビトだろうかって錯覚をする。

昔から思っていたけれど、本当に外国の人みたいだ。

やっぱりビトは、私とは別世界の人なんだと思うと、なんだか無性に寂しくなってうつむいてしまう。