蓮はそんな風に言うけど、カオリさんは違っていた。

「リンダちゃんは、ちゃんと別れるつもりできてるはずだから、大丈夫だよ桃ちゃん。
あの子がちゃんとエイジ君と付き合ってこなかったのだって、理由があるんだよ。」


そして、カオリさんはリンダさんから聞いたことをこっそり教えてくれた。


「リンダちゃんはね、色々複雑な子なんだよ。エイジ君があんまり素直で一途だから、自分にはつりあわないってずっと言ってた。ずっと遠慮してたんだろうなあ・・・年もちょっと上だしね。うちらほどじゃないけど。」


カオリさんはほんとに色々考えて私たちをここに連れて来てくれたんだな。いつものノリと勢いだけじゃなかったんだ。


「僕は桃がエイジと付き合うって言い出したとき、正直びっくりしたんだ。好きな女がいるくせに二股かよってさ。なんかはじめにあわせたときも、興味本位って感じだったし、軽い感じで色々聞いてくるしさ。
ビトと桃がどんな辛い思いして付き合ってたか僕はわかってたから、壊さないでくれってずっと思ってたんだ。」


それはエイジ君のせいじゃなくて、私のせいでしょう・・・
蓮も色々蓮なりに考えてたんだな。

「それは私が悪いんだよ、それだけならただの友達のままで居ればよかったのに、私が勝手にエイジ君のことを好きになっっちゃったんだもの。」


そばにあったウーロン茶を飲むと、なんだかとても苦くて何だか鼻の奥がつんと痛くなってくるのを感じだ。

「違うんだよ、僕の考えが違ってた。エイジはさ、桃と付き合うって言った時から、もうリンダさんのことはあきらめるつもりだったと思うんだ。 真剣に付き合うってちゃんと言ってくれたから。
でもさ、そんな簡単に忘れられないでしょう? エイジは本気で好きだったんだもん。」


蓮にそういわれて、思わず涙が流れていた。


「いいんだよ、忘れられなくたってさ、私だってビトの事忘れられないんだもん。お互い様なんだよ私達は。何度もそれは話してるよ・・・」


うつむいて涙を拭いていると、目の前に卵焼きが出されて、ふと顔を上げると鉄さんが笑って「食べな」ってひとこと言って去っていった。


「ありがとうございます。」


私はその背中にお礼を言うと、
「可愛い子にはサービスな。」

そんな風に言って笑っていた。


「あー私そういうのしてもらったことないですよ、鉄さん。」


カオリさんがそういうと、「そうだったっけ?」ってまた笑っている。


焼きたてのほかほかの卵焼きには、大根おろしが添えられていて、一口口に運ぶと出汁がきいていてほろ甘くてとても美味しかった。

それがとても優しくて、何だか意味もなく大丈夫な気がしてきて不思議。



エイジ君のお父さんは、とっても優しい人なんだろうなあ、人柄って味に出ると思う。