「そんなの、いつものことなのに」
そうつぶやきながら私は泣いていました。誰も見ていない一人のとき。私は絶対に他人に涙は見せないです。そのためか、いつもよりも私の帰り道は寂しく感じました。遡ること数十分前。あの時、私はどうしていればよかったんだろうか。

数十分前、私はいつも通りにトランペットを吹いていました。その時、優人先輩が後ろを通って声をかけてきました。「お前ちゃんと練習しろよ〜!」私は練習しているのに、と思って言い返しました。「先輩、うるさいです。キモいんで話しかけないでください。」言っちゃいけないってわかっていたし、先輩に対して失礼だってこともわかっていました。だけど、自然と口が動いてしまったのです。すると先輩は私の頭をガシッと掴んで「優愛〜?なんか言った〜?」と言ってきました。私は「何も言ってませんよ!ごめんなさい笑」と言って二人でふざけていた所まではいつも通りでした。そのあと、楽器の片付けの時たまたま二人きりで優人先輩に言われました。「なんで、お前ってそんなに口が減らないんだよ」と。私はわかりませんと返事をしながら心の中で「そんなの優人先輩のことが好きだからに決まってるじゃん!」と独りごちりました。でもそのあと「俺、ほんとにお前のこと嫌い。」と言われちゃってどうしようもなくて、思わず言った言葉がこれでした。


「私は...先輩のこと嫌いじゃないですよ。」