紗栄子からバタフライナイフを奪って、左手の人差し指、中指、薬指めがけて思いっきり振り下ろした。



第二関節に刃が刺さり、血がまるで、洋服に付いた染みのような速度で広がった。



もう一度振り下ろす。指3本がゴロッと転がる。不思議と痛みはない。



「て、てめえ……。」



紗栄子の顔が狂気に満ちた。その顔を見て、私は嬉しくなって、満面の笑みで、残った親指と、小指をくっつけては、離した。



「紗栄子、見て。ロボット。」



血が手首を伝う。鮮血。美しい。ビューティフル!



私は紗栄子から紗栄子を奪った。オンリーワンじゃない。特別じゃない。



そのことを知らしめられた紗栄子の怒りと絶望が爆発して、机代わりに使っていたビールケースが飛び、血に染まった指と、トランプが宙を舞った。