それを聞いて、私は紗栄子の目の意味を知った。



「相手はどんな人だったの?」



「借金地獄で、家族に愛想を尽かされ離婚。行く当てのない親父の行きついた先が私。」



「借金……事業にでも失敗したの?」



「連帯保証人になってたんだってよ。逃げられたんだろ?よくあることさ。」



「それってつまり、親切にしたのに、裏切られて、死んだってことじゃない!」



私は我慢ならなかった。真面目な人が損をするなんて……。



「お前さあ、自殺の原因が全部自業自得だけだと思ってるのか?」紗栄子が吸い殻を捨てた。



「いじめを苦に自殺も自業自得か? 事業に失敗して借金抱えても自業自得か? 老い先短くて、将来を苦に思って自殺も自業自得か?」



「それは……。」そうとは言えない。



「でも、真面目な人がどうして死ななきゃいけないの!」



「あのなあ……。」紗栄子が二本目のタバコをセットした。



「自殺を選ぶ時点で、そいつ真面目じゃねえだろ。」