まあそうは言っても、万が一ってことがあるから、念の為記録して、コンピューター室を出た。
ちょうどその時、授業終了を告げるチャイムが鳴った。みんなにとって、授業が一つ終わったことを告げるチャイムは、賛美歌に聴こえるんだろうけど、私には関係のない、ただのキンコンカンコン。
教室を出ていく生徒たちとすれ違いながら、顔を伏せて歩いた。なんだか、周りから変な目で見られているような気がして、堂々と歩けない。
そんなわけないのに、そう思ってしまう。これはもう一種の病気なのかもしれない。
「病気?」
周りも気にせず、そう呟いた瞬間、もしかしたらという思いが沸き上がってきた。
電車に乗れない、閉鎖的な空間が落ち着かない。これも、誰かに見られているような気がする症状と同じ、病気のせいではないだろうか。
そう結論付けると変に納得できてしまう。病気なら電車に乗れなくても、閉鎖的な空間が怖くても、周りの目が気になるのも、おかしくない。
ただ、もし本当に病気だとしたら、これは間違いなく奇病だ。こんな症状の病気なんて聞いたことがないし、そんな人に出会ったこともない。
「奇病……かあ。」
また周りを気にせず呟いてしまった。いや、違う。誰かに聞こえて欲しかったのだ。
私は奇病を持っている。私はお前らとは違う。特別な枷のある人間なんだということを周りにそれとなく知らしめたかったのだ。
そう思えば思うほど、優越感に浸れた。周りの目がほんの少しだけ惨めに見えてきて、愛おしささえ感じる。