リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。






「ねえ、紗栄子。」私はフランスパンを千切って、クリームシチューに浸した。



「ウツって漢字、どう書くの?」



「はあ?」紗栄子の声が上ずった。



「お前、そんなことも知らねえのか?」



そう言った紗栄子の表情が、心なしか柔和で、そんな紗栄子を見ていると、私も頬が緩んだ。



「だって、難しいじゃん。」



「世の中にあるものは、大抵難しいもんなんだよ。だから、人は悩む。悩んで、考えて、簡単な方法を見つける。」



「じゃあ、ウツって漢字も?」



「ああ。」紗栄子が電子タバコを宙に向けた。



「覚え方があるんだよ。」









-了-