想い出のその先に

「おはよう」
そんな声が飛び交う教室。
わたしはそんな言葉が嫌いだ
いつも佑亮がにこにこして言ってくれたのに
今はその言葉もない。
佑亮の隣にいる美穂ちゃんが羨ましくて仕方がない
幼馴染なのに彼女が出来たら幼馴染さえ忘れられてしまうんだね
それだったら出会わなければよかったよ。

決して佑亮が嫌いなわけじゃない
何も言えない自分が嫌いで嫌いで仕方なくて
何も行動できない自分が嫌いで仕方ない

そんなわたしを支えてくれるのは
小林紀子
「美菜、おはよう。今日も佑亮くん彼女ときていたよ」
「・・・」(窓から校門に目をやる美菜)
「しかし、佑亮くんのことそんな好きなの?」
「好きというかただ佑亮の隣にいて笑っていたいだけ。それだけじゃダメなのかな」
「ダメじゃないけど。前に進めば?とも言いたいけど私は美菜と佑亮くんってすごくお似合いだったからみんななんで?って感じだよ?」
「そんなこと言われても佑亮が選んだのは美穂ちゃんだし選んだ佑亮を応援するのが本来の役目なんだけどね」
「わかってるじゃん」
「わたしはね、彼女できたって幼馴染として接してくれたらそれでよかったの。でも全く話さなくなるしシカトされるしでわたしはそっちのほうが悲しい」
「それはそうだね」
すると
教室がガラガラと開く
「さぁ授業始めるぞ」
「じゃまたね」
紀子が小声で席に戻っていった

窓側の席のわたしは校庭と隣合わせになってるグランドを見た
そこには佑亮と美穂ちゃんが笑い合っていた
その笑顔見てまた心に亀裂が静かに入った。