「会えるよ、ちゃんと」

 彼女の姿がダブって見えた。

「さようなら」



 目が覚めると、俺は1人だった。

 隣を見ると、誰かが寝ていた跡だけが残っていた。

 近くのテーブルに紙が乗っているのに気がつく。

 ベッドから起き上がってテーブルに近づき、紙を手に取る。

『再び目が覚める前に帰ります。真由との約束を忘れずに、これからあなたの人生を送ってくれることを願っています。 美由』

 すべては夢じゃなかった。

 昨晩ここに、この隣にいたのは美由ではなく真由だった。

 手のひらに残る熱。

 抱き締めた感触。

 あれは真由だった。

 彼女の手をギュッと握り締めた。

 彼女への思いはこの胸の中に熱となって消えぬままだけれども、ここから一歩抜け出そう。

 それが真由と交わした約束だから。

               -FIN-