「そうだったんだ」

「最後に真由と話をしてあげて」

 彼女の腕から開放された。

 美由が目を閉じる。

 そして再び目を開けた。

 その表情が微妙に変化していた。

「ごめんね、和馬くん。驚いたでしょう」

「真由・・・」

「もう一度、和馬くんに会いたかったの。だから、美由にお願いしたんだ。あの日からずっと、わたしの幻に囚われているよね?忘れられないでいるでしょう?新しい恋にも向かわずに」

「それは・・・」

「もう開放されていいんだよ。新しい恋をしてもいいんだよ。それはいけないことでもなんでもないし。わたしは和馬くんと一緒にいれてすごく楽しかったよ。短い一生だったけど、たくさんの思い出をもらったもん。だからこれからは和馬くんの人生を生きて。恋をして、結婚もして。まだまだこれからでしょ」

「真由・・・」

 俺の視界が涙で滲んでいく。

「返事は?」

「わかった」

「ありがとう。昨日、とっても楽しかった。もうそろそろ時間だから、わたし行くね」

「真由」

「うん?」

「俺も楽しかったよ」

「また、来世でも会えるかな?」