「何を心配しているの?何にもされていないよ」

 彼の顔がホッとしたような表情になった。

「ちょっと、お水飲んでくるね」

 部屋を出て、キッチンへ行き、近くにあったコップをゆすいで水を汲んだ。

 水を飲み干して、大きくため息をついた。

 まだ、夜が完全に明けていない。

 この状態で部屋を出ることはできない。

 どうするか。

 気持ちが決まらないまま、部屋へと戻った。

 そのままベッドへは戻れず、窓辺へと歩いていく。

 カーテン越しの窓からはかすかに光が差し込んでいる。

 自分の身体が一瞬だけ何かに包まれた感じがした。

「!」

 後ろで息を彼が息を飲むのがわかった。

「真由・・・じゃないんだな」

 後ろを振り向くと、彼の驚いた表情があった。

 わたしが真由でないことに気づかれた

 隠し通すことはできない。

「気がついちゃったんだね。騙すつもりはなかったんだよ」

 ベッドへと近づいた。

 和馬の落胆が手に取るようにわかって、わたしは自分の胸に彼を抱きこんだ。

「今のわたしは真由でなく、美由。でも、昨日あなたと会ってたのは真由よ。彼女に一晩だけ身体を貸すことを頼まれたの」