実家にいないものがやってくると家族(特に親)が歓迎するのは私の家だけだろうか。

労働者たちは作業を止め、兄のもてなしを始めた。ティータイムが始まる。

どうやら兄の家に彼女が同居するらしい。家具を少しばかり追加することになり、それらの購入額は塵も積もれば山となるらしく実家にたかりに来たのだ。

「そんなに生活大変そうなら少し位お金出すから新しいもの買っていいのよ?」

ちなみに私は家にお金を入れているが、兄は入れていない。

「いや、余ってたらもらおうと思ったくらいだし」

「一人暮らしも大変でしょうに」

「父さんも一緒に暮らそうか」と冗談交じりに言う。労働者1名は脱走したいようだ。

「ミエはずっと実家だから本当に一人で暮らせるのかしら。結婚の話も彼氏の話すらもないし」

いつもここに至る。一人暮らしはそんなに偉いものなのか。

「あ、そういや俺の友だち合コンするって言ってたわ。誰かいい子おらん?そいつはメンバー組んで参加しないと思うしお前行ってこれば?」

「承知した!」





いつもより大人っぽい衣装を意識して参加した合コンは思っていたより悪くなかった。

特に、2歳年上の黒髪の人は印刷会社に勤めているらしく、給料はそれほど高い会社ではないようであるが定時に自宅に戻り、余裕のある落ち着いた生活をしているようだ。

看護師のいいところは相手の所得に特別こだわらなくても自身もそこそこ稼げるため一緒に家計を支えることができるところである。国家資格に感謝。

その人は細木さんといい、私と彼はお互い良い雰囲気になり、3次会は2人で別の店へ行くことにした。

「次は和食でもいいし、バーで飲み物だけでも全然・・・・・あ、すみません電話」

『今どこにいるのよ』母だった。

こんな時に電話してこないでもいいのに。

『そこにいるんだったら23時まであのスーパー空いてるから帰り卵とサラミ買ってきて!あ、まさかお泊りとかだめよ明日朝に町内会の草むしりあるから出てもらわないと』

わたしの出会いはサラミ、卵、草むしりより大切なようだ。