今までずっと幼馴染で家族みたいに過ごして来た
それに、修也には彼女がいる
なのに…
気づいた想いに見て見ないふりなんてできなくて。
諦めないといけないのに
それでも修也を抱きしめる手の力が緩むことはない
怖くて
さみしくて
ひとりで足がすくんで歩けなかった
なのに
藍乃
彼が私を呼ぶだけで彼の元へ全速力で走ることができた
大丈夫
まだ歩ける
震える掌を握りしめて抱きしめる手を解いた
「…ひとりじゃなくて…よかった。」
修也が来てくれてよかったと
そう笑顔を作る
そんなこと言ったって心の中では恐怖がじわじわと侵食しているのに
自分も、修也も騙して嘘をついて笑うことが一番だと思った
「…お前ってほんと、馬鹿だな」
すると、修也が握りしめた私の手に触れた
「?」
大きい手は私の固く握った握りこぶしを柔らかく解いていく
「ほら、力抜け。俺が隣にいるんだから。
弱音吐いたっていいから」
解かれた掌に目を移すと
そこにはくっきりと爪の跡が残っていた
4つの曲線のうち2つに少し血が滲んでいる
修也に言われて気がついたのだ。
恐怖を掌の痛みに変えて耐えていたこと
それでも恐怖が優って手の痛みなんて感じる暇もなかったこと
「ほんと、…お前って馬鹿だよ」
修也はそう言ってため息をついた
呆れたような修也の言葉だけど、
声も、私の手に触れる私よりも大きな手も。
びっくりするくらいに優しかった

