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「…愛妃。お前さ…よかったの?」
暗い中を愛妃を背負って歩く俺は先ほどのことを思い出して呟いた
『…お前らさー。待ってろって言ったじゃん』
進行方向とは反対に向かっていた俺たちは修也と会った
『まーまー、いいじゃん別に』
笑いながら返すと修也ははぁ、とため息をつく
『で、なんで戻ってんの?』
愛妃を背負いながら順路と逆を歩く俺たちに修也は問うた
『しゃーねぇだろ?愛妃がこの状態なんだから』
俺は先ほど修也がしたようなため息をつきながら愛妃を背中から下ろそうとした
『やだ!』
しかし
愛妃は両腕を回したまま離れてくれない
おいおい…
嘘だろ?
修也はお前の彼氏じゃねーか
彼氏の前で他の男から離れたくないとか言うなよ
『…修也だぞ?お前…いいのかよ』
『なぁ…藍乃は…?』
愛妃に聞く俺の言葉を遮るように修也が俺に問う
『あ…悪い。あいつ置いて来たから、戻って来るわ』
俺が愛妃をどうにか降ろして藍乃の方に向かおうとすると修也が俺の肩を乱暴に叩いた
『馬鹿!あいつ怖いの無理だっつのに!
なんで残して来たんだよ』
修也が走り出す
藍乃のいる方へ向かって
その様子は必死でまるで…
『…おい!愛妃は…!?』
俺は…!?
『後は頼んだ!』
そう言って修也の背中が遠くなっていった
そして、今に至る。のだ
なぁ…
修也
愛妃はお前の彼女だろう?
なのに彼女を他の男に任せてただの幼馴染に会いにいくものなのか?
「…修也は…藍乃ちゃんが好きなんだよ。
ずっと前から」
俺の背中でポツリと愛妃が呟いた
…え?
「私も、修也が好きだから付き合ってるんじゃないもん」
先程までぐずっていたのに俺の背中にいる愛妃の声が耳元でやけに凛として聞こえる
「…じゃあ…
なんで付き合ってるんだよ」
暗闇を歩く中、俺は体をずらして愛妃が落ちないようにもう一度背負い直した
「…修也は…藍乃ちゃんに振り向いてもらうため。
私も……好きな人に振り向いてもらうため…だよ」
…マジデスカ。
ふつうに仲のいいカップルだと思って
からかっていたのに
でも…
走り去る修也の背中はたしかに
愛しい人へと向けられた強い背中だった
修也の笑顔はいつも藍乃には優しかった
…修也にとって藍乃は
ただの幼馴染じゃなかったのか
なぁ、愛妃
俺たちがお前らをからかっていた時
お前が好きなやつを振り向かせようと修也と付き合うと決めた時
その時
お前は…どんな気持ちだったんだ?
好きな人を振り向かせるために
そこまでするのかよ…?
………お前が好きなやつって
…どんな奴なんだろう
一番俺の心をモヤモヤさせたのは何故か愛妃にそこまで想われている誰かの存在だった
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