彼はそう言ってあたしの手をとった。

「このまま一緒に帰ろ?」

と言われた。

「うん、いいよ」

まあ、断る理由も無いしな。と思ったときだった。

「...なにしてんの、片瀬」

「あ、北川君。あれ?帰ったんじゃないの?」

「...忘れ物したから、とりに来た」

「そっか、じゃあまた...」

明日ね、まで言えなかった。

だって、北川君が、

あたしの手を引いて、

「忘れ物が先に帰ってどうするの?」

なんていうから...

「え?忘れ物って...?」

「...カイロ」

「え、でも待って、あたし須藤と帰るって...」

「...ああ、忘れてた」

そう言って、王子は須藤の方を見た。

「片瀬は、俺だけのカイロだから」

と、王子はなぜか『俺だけ』をとても強調して言った。