またしても頭を抱えようとした、そのとき 「ねぇ」 右隣から囁くような小さな声が聞こえてきた。 まさかと思いつつもゆっくりと声のしたほうへ目を向ける。 すると案の定、隣の席の男の子が……"一ノ瀬くん"がイスから少し身を乗り出しこちらを見つめていた。 「えっと、紺野さん、だよね? 教科書ないの?」 「え……あ、は……い。」 男の子と目を合わせることが怖くてできない私は、 自然と視線を横にずらした。