白い息がゆっくり溶けて、消える。

凍えるような寒さ。

どこを見渡してもキラキラと輝くイルミネーション。

なんとなく、いつもと違う人混み。

行き交う人の幸せそうな顔。

…遠くに見える、大きなクリスマスツリー。

毎年、この景色は変わらない。

去年も、今年も。

ただ、今年はやけに息が白いような気がする。

それは、気のせいかもしれないけれど。

マフラーに口もとを埋めて、歩くスピードを早める。

クリスマスツリーがだんだん大きくなっていく。

赤や青、緑、黄色…たくさんの色が緑の大きな木を飾って、一番上の星が霞んでしまうくらいだ。

いつも、このクリスマスツリーはきらびやかに飾りつけられていた。

クリスマスツリーの根本にたどり着くと、そこでは親子連れやカップルが写真を撮っている。

クリスマスツリーを囲むように設置されたベンチには、あまり座る人はいないようだ。

このベンチは待ち合わせ場所として使われることが多くて、この時間はすでに皆待ち合わせの相手にあっているはず。

……私は、待ち合わせをしているわけではないけれど。

正確には、ここで、会う約束をしてはいる。

でも、今日確実に会えるなんて保証はない。

会えなかったら、そこまでだと、そう覚悟も決めてきたつもりだ。

しばらくここで待つことにして、ベンチに座る。

私が座ったところはちょうど大通りに面していて、並んだお店が淡い光に包まれてる、どことなく綺麗な景色だった。

街灯も、少しオレンジがかった色が綺麗だ。

ぼうっとその景色を眺めて、目を閉じる。

「ねぇ、いま、どこにいるの?」

誰にも聞こえない独り言は、寒空に消えていった。