「まず最初は野球部の皆さんです。」
部活動説明会は各部部員達が練習風景や、大会の実績など自由に話したあと、司会が1、2個ほど質問をするのだ。

野球部は、軽くキャッチボールか。
さすがに体育館ではこれぐらいしか出来ないよね、窓とかあるし…。
「それでは質問に入ります。部活で1番楽しかったことはなんですか?」
「そうですね、新人戦前の合宿ですかね。新しいチームになり初めての合宿なので、練習よりも団結力を深めるための交流会のようなものなのでとても楽しいです。普段の練習は厳しいですけどね。」
平先輩は何質問するんだろ。
「ぐるぐるバットは何回までできますか?」
なにいってるんだ?
ふざけてるのか?って思ったけど平先輩、目キラッキラだ。あれは本気の目だ。

「え?!えっとですね、道具でふざけると監督に怒られるので、バットだけでなく、使うものは全て大切に使ってます。」
いや、野球部も真面目に答えるのかよ!

「や、野球部の皆さんありがとうございました。」

司会、沙奈先輩だけでよくね?平先輩いらなくね?

「暁くん、暁くん!」
「あ、萌花そろそろか。」

萌花に呼ばれてアタシはやっと出番が近づいてることに気がついた。

萌花は高校に入ってできたアタシの親友だ。
同じクラスで同じ部活。
ちっちゃくてふわふわしてて、ザ☆女の子って感じ。
その萌花が、パニエもりもりのドレスに着替えてるから絵本のお姫様がそのままとび出てきたみたい。

「あ〜!暁くんキンチョーしてる〜!!」
「しっ!萌花静かに!!今他の部の発表中だよ」
「ごめんごめん〜!ほらほら!もえがいつもの魔法かけてあげる!」
そう言って萌花は私の両手を取りいつもの呪文を唱えるのだ。
「暁くんはかっこいい王子様。この世界でいちばんかっこいい王子様。暁くんは優しい王子様。この世界でいちばん優しい王子様。」

―――ドキ、ドキッ。

緊張してる。
けど、いつも通りいつも通り。
自分らしく演じるだけ。

アタ…ボ、ボクはかっこいい王子様。

いつも通り、あの人のように演じるんだ。

「はい!次はもえの番!」
「はいはい。じゃあ目を閉じて」
そう言って今度はボクが魔法をかける。「萌花は可愛いお姫様。世界で一番可愛いお姫様。萌花は美しいお姫様。世界で一番美しいお姫様。」

と。