その時だった。

『ピリリ ピリリ』

電子音がした。

どうやらこのタイミングで電話がかかってきたらしく、

中谷くんは少し恥ずかしそうに、素早く電源を切った。

「ごめん。マナーモードにしとけばよかった。」

そう笑いかけてきた中谷くんに、自分がときめいていて。

私は、今誰が好きなんだろう。

自分で、自分の気持ちがわからなくなっている気がした。

そんな沈黙を壊すように、バタバタと足跡が聞こえてきた。

だれかくる?

「結愛。無理に答えなくて、いいから。ごめんな。」

中谷くんが優しく笑って、教室を出ようとしたとき。

ドアが勢いよく開いて、都築くんが転がり込んできた。

息を切らしながら都築くんは中谷くんに向かってこう言った。

「滝山龍が来ている。」

と。