君だから。




────



ゴーン、ゴーン────


10時を知らせる時計の鐘が鳴った。


あと、30分かー。


結構、長い。


なんか、買いに行こうかなそう思ったとき────


葵ちゃん?


受付に並んでる小さい姿。


遠目からでもはっきりと分かった。


葵ちゃんだ。


遠くから見てもやっぱかわいいや。


俺が葵ちゃんに見とれてる間に受付を済ませたらしく、こちらに向かってくる。


こっち見ないかな…。


葵ちゃんは歩く時に下を向いているから俺がいることにまだ気づいてないみたい。


あ、止まった。


そして、葵ちゃんは屈んで何かを拾う。


あ、チケット落としたのか。


そして、立ち上がった葵ちゃんは顔を上げて────


一瞬止まる。そして、こちらへ駆け寄ってくる。


どうやら、俺に気づいたらしい。


だから俺は葵ちゃんに手を振った。


振り返される小さな手。


そして、俺の前で止まってニコッと笑った。


っ────


それは、反則でしょ。


可愛すぎだから。


そんなことされたら俺、期待するじゃん。


「晴翔くん、早いね」


「ちょっと、早く来すぎてさ」