君だから。



「うん、そうだよ」


「へぇ〜。すごいね。一個もらってもいい?」


そう聞いてきた晴翔くんの目はキラキラと輝いていてすごく食べたそうにしている気持ちが伝わってきた。


「えっと、うん。こんなので良ければどうぞ」


そっと晴翔くんにお弁当箱を差し出すと晴翔くんはにっこり笑って


「やった」


と無邪気にはしゃいでいた。


そして、卵焼きをひとつ口に入れる。


「うまー!」


「ほんと!?」


「うん。マジでうまい!すごいよ、葵ちゃん」


真っ直ぐな言葉で褒められると照れくさくなる。


「あの、よかったらもっと食べて?」


「え、いいの!?」


驚いている晴翔くんに私は静かに頷いた。


だって、あんなに美味しそうに食べてくれたらもっと、食べて欲しいと思ってしまうよ…。


「でも、葵ちゃんはお腹すかない?」


「私はもう競技出ないから大丈夫だよ」


心配する晴翔くんにそう言って笑ってみるがまだ浮かない顔の様子。


「じゃあ、これ食べて」


私の前に差し出されたのは購買のパンだった。


「食べないと倒れちゃうよ。ただでさえ細いのに」


心配そうに私を見つめる晴翔くん。