「そーだ!ハルお前図書委員でしょ?」
思い出したように言う急な瑞季の質問を少し不思議に思いながら答える。
「そうだけど…」
「あのさー、委員会でしおり作りの話出たことあった?」
そう聞かれて思い出す。
『大切に扱ってくれるようにしおりを作ってみるとか、本を大切にしたいって気持ちを生徒に伝える工夫が必要だと思います』
『わたしはもっと本を大切にしたいんです!』
あのときの先輩の言葉を。
「あったけど…」
「それさー、琴せんぱいがここ1週間くらい作ってんだよ。1人で」
「1人で?」
"琴せんぱい"というのは図書委員会の委員長だ。
いくら委員長と言えど、1人で作るのはさすがに大変じゃないかと思う。
「毎日放課後作ってるとこ見かけるんだけど、そろそろ1人はキツそうだからさ」
「わかった」
「さんきゅ…って図書委員でもない俺が言うのも変だけど。いつも図書準備室だから多分そこだと思う」
しおり作りは本来委員長だけの仕事ではないはずだから、手伝うのは委員会の活動として当然。だから逆にこっちがお礼を言う立場だ。
「んで、茉乃せんぱいも図書委員だよな?俺昼休み茉乃せんぱいにもこのこと伝えてくるから弁当先食べてて」
「んー」
俺の短い返事を聞き、今度こそ自分の席に戻った瑞季。
出てきた名前に少し自分が反応したことは気にしないふりをした。
