真悠くんは、一瞬驚いた表情をしたけれどすぐに真顔に戻って、ずっとわたしを見つめて。


そのまま10秒くらいの沈黙の後、ふっと笑って



「出来るもんなら言わせてみれば?」



そう言った。



…………いやいや!何今の!何そのイタズラな感じの笑み!


不覚にも…不覚にもきゅんとしてしまったじゃないか。わたしの顔はいまもう出来たてのおでんの卵くらいに熱い!ぜったいにりんごを越えた顔の赤さに違いない!!



真悠くんの姿なんてもう見えないし…


どうせ放心しているわたしの反応を楽しんで、すぐにスタスタ自分の教室へ向かってしまったんだ。


わたしも行こう!って思ってるのに、なぜか余韻に浸ってしまって足が動かなくなってしまったわたしを呼ぶ声が聞こえた。



「茉乃せんぱい!」



それは聞いたことのあるとても人懐っこい声。



「茉乃せんぱい、おはようございまーす!」



瑞季くんはいつもと変わらない明るい声で挨拶をしながらわたしの顔を覗き込むと



「どうしたの茉乃せんぱい!顔まっかっか!」



そう言ってなぜだかケラケラと笑い始めた。


どうやら真っ赤なわたしが相当ツボに入ってしまったようだ。失礼じゃないか。レディーの顔を見て大爆笑なんて。