「もう体育祭は終わっちゃったし、お昼は無理ですけど」
だよねぇ…
やっぱり無理だよなぁとがっくりしたわたしの耳にもう一度真悠くんの声が届いた。
「このパンで良ければ一緒に食べません?先輩が取ってくれたやつですけど」
「え!いいの?」
「先輩が言ったんじゃないですか」
「いや、でも!お昼一緒に食べてくれるって言ったときから、これは体育祭の奇跡なんだって思ったのに」
「体育祭の奇跡ってなんですか」
「なのに、体育祭終わってからも一緒にご飯食べてくれるの!?」
真悠くんの盛大なツッコミは聞こえなかったことにして、真悠くんに問い詰める。
「別にいいですよ、これくらい」
そう言ってパンを開けようとする真悠くんの手をパッと止めた。
「あ、待って!その、あの、なんていうか…」
「なんですか?やっぱりまだ食欲ない?」
「いや、そうじゃないの!あのね…」
「ん?なに?」
わたしが言葉に詰まって俯いていると、真悠くんがわたしの顔を覗き込んできた。
いや、たまーにやるそれなんなの真悠くん!ダメだよこんなの反則だよ?これで何人落とせると思ってんの?
とそんな悲鳴が自分の心から聞こえたけれど、ひとまずそれは置いておいて…
体育祭が終わってあの時のワイワイした雰囲気もなくなると少し言いにくく感じる。
わたしが作ったお弁当を食べてほしいと言ったら流石に嫌かな。どうかな。
