「そんなの、気にしなくていいのに。
わたしが勝手に頑張っちゃっただけだよ!」
そういえば利世に言われてたのにな。
「開会式のとき利世に“気合い入れすぎて空回るな”って言われてたし、倒れる前にも“今のお前危ないから水飲め”って言われたのにわたしがしなかったのが悪いし!」
「桐山先輩そんなこと言ってたんだ…」
「え?真悠くん何か言った?」
真悠くんがぼそっと呟いた言葉が聞き取れなくて聞き返したけれど、なんでもないですと返されてしまった。
「あ、そういえばね!」
わたしはハッとコロッケパンのことを思い出し、真悠くんにぱんを差し出す。
「はい!これパン食い競走で取ったやつ!」
少し驚いた様子の真悠くんにわたしはお構いなく続けた。
「真悠くんよくコロッケパン食べてるでしょ?だからパン食い競走では絶対コロッケパン取って真悠くんにあげるって決めてたんだ!やりたいこと1つは実現できてよかったよ!」
「やりたいこと?」
わたしの話を聞いていた真悠くんがわたしにそう聞き直した。
「他にもあったんですか?」
「本当はね?もう体育祭終わっちゃったけど」
真悠くんはわたしがずっと差し出したままにしていたコロッケパンをやっと受け取ってくれた。
