「保健室行くぞ」
利世の妙な程に優しい声が聞こえた。
いつもより高い視点からぼんやりと地面を見つめながら考えた。
わたし、いまなにしてたんだっけ?
そうだ、体育祭だ。
パン食い競走終わって、すぐに応援パフォーマンスをしてたはずで…
踊り始めて少し経ってからなんだか不思議な感覚になって。
あまり心地よくはなかった気がする。
あれ、わたしちゃんと踊れたのかな。
せっかく利世に教えてもらって、真悠くんにも応援してもらって頑張ってたのに。
「りよ…わたし、ちゃんと…」
「出来てたぞ。ちゃんと」
わたしの言葉を遮るように言った利世の言葉を聞いて安堵する。
「よく最後まで頑張ったな」
利世の大きな背中に揺られながらそんな声を聞いたのを最後に、わたしは意識を手放した。
