「あ、そんなつもりじゃ…」
琴ちゃんがそう呟いたとき、わたしの横をスっと誰かが通った。
「そういうことじゃないんじゃないすか」
真悠くんが琴ちゃんの横に立っていたのだ。
そしてそのまま続けて言った。
「どっちが悪者とかそういうことじゃなくて、桜庭先輩がいないところで言ってんのが良くないんじゃないですか」
真悠くんは右隣にいる琴ちゃんをさらりと見てまた前に向き直った。
「桜庭先輩は最初から強制してたわけじゃないし、そういうのも文句とか陰口じゃなく意見として伝えれば、ちゃんと聞いて対処してくれる人だと思いますけど」
真悠くんの言葉を聞くと、そこにいた4人は少し考えてから納得したような表情を見せた。
「なんか毎日参加してる真悠に言われると納得せざるを得ないわ」
「1年にそう言われるの先輩として情けねえしな」
そう言って少し笑うと、真悠くんが4人が座っていた近くに座り、少し笑って言った。
「上田先輩いつもサボってますよね?1回くらい来たらいいじゃないすか、意外と楽しいっすよ」
「お前ほんとなのかよそれー」
「だから言ったじゃん。わたしは結構楽しいって言ったよー?」
「原先輩いつも来てますもんね」
「真悠を拝めるからっていうのも理由の一つだけどね」
なんだ、この馴染み具合は…
真悠くんが委員会の先輩たちと仲良さげに話している…
それに真悠くんの言っていることは全て正論で、やっぱり真悠くんはすごいななんて思わされてしまう。
それと同時に、応援団練習ばっかりでこっちには参加できていなかったわたしがあんな風に出しゃばるべきじゃなかったなと少し反省する。
「琴ちゃん大丈夫だった?」
小さな声でそう聞くと、琴ちゃんはぼーっと真悠くんの方を見つめていた。
