「小刀持ってる?」


「は?」


「貸して」


「……」



晋作が小さな刀を平助に渡すと
平助は、懐から巾着袋を出した


その中から、兄から貰った
家紋が彫られた木を出した



5人兄弟の幼名を削り




「ありがとう」




小刀を返し、しばらく家紋を見つめた



「晋作!これ、俺の大事な物なんだ!
俺は、晋作と同じ気持ちだけど
行動を共にすることは出来ない!
たとえ、間者の疑いがかかり
拷問されても、切腹になっても
俺は、新選組の皆といたいんだ!
だから… これ、晋作にやる!!!」



家紋を受け取ると
晋作は、平助を見た


にこりと笑う平助から
視線をそらし


ズズッと鼻を啜る



「ごめん…勝手にこんなことして…」



「いいよ!」


「立場悪くしたな」


「それはない!俺が攘夷派なのは
皆、知ってるし
それで、疑われたことないんだ!」


晋作が潤んだ目を平助に向けた


「だったら……」



〝なんで死にたがってるんだ!?〟




言葉には出来なかった







「平助…」



「晋作!お前とは、戦いたくない!
だから…2度と俺の前に現れるな!」



平助が新選組の皆の方へ向き
晋作に背を向けた




「馬鹿……敵に背を向けんな……」



「敵じゃねえよ!
晋作は、俺の友だから!
次、会う時は、敵だけどな…」



晋作が、わなわなと平助の肩に顔を当てた



「生きろよ……死ぬんじゃねぇぞ……」




平助にしか聞こえない小さな声で
そう言った



にかっと笑い




「晋作も!」



肩から顔を上げ




「平助の事、虐めたりしたら
許さねえからなっ!!!!!」





泣きながら叫んで、走り去った