翌日



警備の打ち合わせで、新選組が二条城へ


「姫様!!困りますっ!!」


「うるさいっ!!ついてくんな!!」



慶喜に拝謁中の近藤と土方、新選組幹部達が、声の主が平助であることはわかる



スパンッ




勢い良く開けられた襖




「おいっ!慶喜!!
てめえいい加減な名前つけんじゃねぇ!!」




「姫様!!言葉遣いにお気をつけ下さい!」



「何でもいいと聞いたが?」




澄まして薄ら笑う慶喜の隣に
ドスンと座り



「だからって、『狼』って
人につける名じゃねぇだろーが!!!」


「新選組にいたとゆーから
其方の第一印象は、それだ
仕方あるまい
それより、折角着飾っても狼のままだな」


「はぁ!?俺だって、女らしくしようと
思えばいくらでも出来るし!!!」



あまりにも平助のままでいることに驚き
目が点になる



「お変わりなくて安心しました」



近藤がニコリと笑う



「あら?急に余所余所しくなられて
さみしいですね」



近藤には、優しい口調で返事をして
ギロッと慶喜を睨み



「まともな名前も考えられねぇような
将軍なんざ、守る気も無くなる!!
適当でいいから!普通の名前つけろ!」


「そんなに言うなら
其方が自分でつければよいものを」


「はぁ!?面倒なことは、したくねぇ!」


「それを俺に押し付けるな!
狼姫で、ぴったりじゃないか」


「のぶでは、ダメなのですか!?」


近藤が問う


「ダメ!!ヤダ!!
新選組の皆からならいいけど
コイツらから呼ばれるのは、嫌!!!」



「それでは、『誠』というのは?」



近藤としばらく見つめ合い



「それにします!」



ニコニコと部屋を出て行く

慶喜がため息を漏らす





「あんな女は、見たことがない…
家定様の御息女ということは、まだ公表しておらぬから、静かにしておればよいのに
朝から、ぎゃあぎゃあと怒鳴り続け
城中を歩き回り、見知った顔の者と
喧嘩をして騒ぎを起こし
今も、俺に突っかかる
うるさい上に、可愛げのない女だ!!」







苦笑いするしかなかった