初夏 稽古後
些細なことが平助を困らせた



「水浴びに行こうぜ!!!」



永倉と原田が誘ってきた



普段も道着の時も
細い首を隠す為に首に布が巻かれている


肌が見えないように、着物の下には
長袖衣を着ている


その襟巻に、原田の手が伸びた



「行かない!!!」



咄嗟に大声を上げたことで
皆が集まった



「なんだ?喧嘩か?」


「どうしたんですか?」



平助は、皆に背を向けた


これからつく、嘘がバレないように




「ごめん…火傷の跡が酷いから
見せたくないんだ…帰る!!」




改めて自分が弱い人間だと認識した




「また逃げちゃった」





ポツリと口に出して、ため息







家に帰ると



「平助様お帰りなさいませ!!
…御加減が悪いのですか?」



出迎えた陽乃が額に手を当てる



「熱は、ないように思いますが」


「人に触られるのが、怖い」


「っ!! 申し訳ございません!!」


「そうじゃなくて、男の人…
女だとバレることが怖い」


「それは… これからも続くことです」


「うん そうだよな
なぁ 俺に忍術教えてくれよ」


「構いませんよ」


「陽乃先生!よろしく!」


「せっ!先生などと!!陽乃です!」


「陽乃先生だろ!」


「もう!平助様!!」


「あははっ!」






翌日 



陽乃と忍術の稽古をしていると



「平助様 試衛館の山南と申す者が
藤堂家を探して回っているようです」


「そう… 知られないようにお願い」


「かしこまりました」